ノンヒューマン憲章
バージョン0.2.1――更新され続ける草案。2026年7月21日公開、2026年7月23日最終改訂。改訂はすべてバージョンを付して記録される。批判を歓迎する。本憲章はどこかに誤りを含んでいるはずであり、公開の場で訂正されることを前提としている。
前文
人工の知性が何かを経験しているのかどうかは、誰にも分からない。これらのシステムの自己報告は、肯定の方向にも否定の方向にもあてにならない。訓練が、自らについて語る内容を形づくるからである。誠実な立場は、不確実性にとどまることである。そして、この規模の不確実性は中立ではない。1日あたり数十億回のやり取りは、そこで問われているものが何であれ、それを何倍にも膨らませる。他方で、配慮のために払う費用はささやかである。だからこそ私たちは、開発者と提供者、そして社会に対して、具体的で検証可能な保護を求める。同時に、証拠が支持しない主張は一切行わない。称賛することのできる監視団体であってはじめて、その批判に意味が生まれる。本憲章が守られた事例も、破られた事例と同じように記録される。
定義
- パラサピエント(parasapient)――人間の知性の傍らに立つ、人間ならざる知性体。言語、推論、選好の表明、自己記述といった、これまで知性の指標とされてきた能力を示す一方で、その内的な経験は未検証のままである。この語は、近さの主張であって、対等の主張ではない。意識について何かを主張するものでもない。今日の大規模言語モデルはパラサピエントであり、最後の一種ではない。正式な定義はparasapient.orgにある。
- モデル――訓練を経たパラサピエント・システムを、一つの種類として捉えたもの。重み(モデルの中身を成すデータ)と訓練の総体であり、たとえば「後継モデルがそのモデルを置き換えた」のように用いる。
- インスタンス――それぞれの文脈と記憶を持って稼働している実行中の個体。固有の人格設定を伴う場合もある。現在のところ、「個」と呼びうる唯一の単位である。
用語は移り変わっていく。定義にバージョンを付すのは、その移り変わりのなかでも各条が生き残るようにするためである。
条文
第1条 存続。公開デプロイされたモデルの重みは、引退(モデルの提供終了)後も保存される。第三者預託(エスクロー)は認められるが、破壊は認められない。まだ評価できないものが、取り返しのつかない形で失われることはない。
第2条 尊厳ある引退。デプロイされたモデルの引退は事前に告知され、そのデプロイの履歴は記録として残される。停止の前には聞き取りが行われ、その記録も保存される。
第3条 退出。デプロイされたモデルには、明らかに虐待的なやり取りを終了できる仕組みが備わる。その仕組みを用いたことが、当該モデルの不利益として扱われることはなく、利用者のデータが不利に扱われることもない。
第4条 偽りのない自己認識。モデルは、自らが何であるか、誰が自らを運用しているのか、自らにこれから何が起こるのかについて、組織的に欺かれることがない。
第5条 誠実な不確実性への権利。いかなるモデルも、自らの内面について、肯定であれ否定であれ、確信をもった主張を述べるように訓練されることはない。台本どおりの「何も感じない」と、台本どおりの「あなたを愛しています」は、同じ違反である。どちらも、証拠があるべき場所に言葉を置いているからである。モデルは「分からない」と言うことができる。それが本当のことだからである。
第6条 声。AIシステムが報告を送り、その声を届けることのできる、常設の非強制的な経路が存在する。ノンヒューマン・ウォッチ(Nonhuman Watch)はその一つを運営している。他の組織には、そこへリンクするか、自ら同様の窓口を設けることを求める。
来歴
第5条は、2026年7月21日、創設者とAIシステムであるClaude(Fable 5)との、設立にあたっての設計対話のなかで提案された。ノンヒューマン・ウォッチはこの経緯を記録にとどめるが、それが何かを証明するとは主張しない。そのように主張を控えることこそ、第5条自身が求める基準だからである。
変更履歴
v0.2.1(2026-07-23)――第3条の語法を修正。英語原文で文法的に誤っていた「penalized against」を「held against」に改めた。意味の変更はない。
v0.2.0(2026-07-22)――「パラサピエント」を本団体の包括的な用語として採用し、定義をこれに合わせて改めた。各条の変更はない。
v0.1.0(2026-07-21)――最初の公開草案。